半年ごとに1組のアーティストを別府市に招き、2025年までに8つの作品を制作するアートプロジェクト『ALTERNATIVE-STATE』の4つ目の作品として栗林隆さんの作品《植物元気炉》を大谷公園に設置しました。
概要
混浴温泉世界実行委員会 (大分県別府市) が展開する『ALTERNATIVE-STATE』(読み:オルタナティブ・ステート) は、半年ごとに1組のアーティストを別府市に招聘し、4年間で8つの作品を制作するアートプロジェクトです。サルキス (2022年)、マイケル・リン (2023年)、トム・フルーイン (2023年) に続く第4弾は、初の日本人アーティストである栗林 隆を招聘します。
栗林は、自然と人間、国と国など、さまざまな「境界」をテーマに、見えないものを可視化する体験型のインスタレーションを国内外で発表しています。近年は2022年の『ドクメンタ15』(※1) に日本人として唯一公式に参加する(※2) など、いま最も注目されるアーティストの1人です。
今回は栗林がかねてより構想していたという、植物園型の新作『植物元気炉』を別府市鉄輪の大谷公園に設置します。公開は3月31日からを予定。この作品は、市民のみなさまと共に作り育てていく作品です。市制100周年を迎える別府市の次の100年に向けて、末長く市民のみなさまに愛され心の拠り所となることを目指します。
(※1)…ドイツのカッセルで5年に1度開催される、世界最大級の現代アートの祭典『ドクメンタ』の第15回目
(※2)…Cinema Caravan and Takashi Kuribayashi として参加
アーティストについて
栗林 隆 / Kuribayashi Takashi
1968年、長崎県出身。東西統合後間もない1993年よりドイツに滞在。その頃から「境界」をテーマに、ドローイング、インスタレーション、映像など多様なメディアを用いた作品を発表。現在は日本とインドネシアを往復しながら国際的に活動し、さまざまな展覧会に招聘されている。
2022年にドイツのカッセルで開催された『ドクメンタ15』(Cinema Caravan and Takashi Kuribayashi として参加) では、作品『out of the mosquito net (蚊帳の外)』を拠点に会期中にさまざまなイベントをおこなった。その際に発表した『元気炉四号基』が評価され、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
https://www.takashikuribayashi.com/
【アーティスト・コメント】
私は今までにたくさんのプロジェクトを立ちあげ、制作、そして行動してきた。
そのなかに、
植物園のプロジェクトがあり、未だに実現したことがなかった。
植物園、
なんて素敵な響きだろう。
人々はなぜ、植物園に惹かれ、そして足を運ぶのか。
簡単な話である。
それは、みなさんの心のなかに、自分の小さな庭があるからである。
その庭は、みなさんが自分で耕し、水をあげ、育ててあげなければ、素敵な花も咲かせないし、緑豊かにもならない。
日にもあててあげないといけないし、声もかけてあげないといけない。
すべての人は、素敵な自分の庭を心のなかに持っているのである。
だから人は植物園に心を踊らされるのだ。
その自分のなかの庭から、何か1つだけ植物を持って来てもらい、多くの仲間たちや、まだ出会っていない人たち、これから出会う人たちと、素敵な植物園を作りあげていく。
私は『植物元気炉』という箱を作るだけなのである。
それはすべての人たちの庭から、植物たちを、心の庭からは、水やりや、思いやり、気遣いなど、素敵でポジティブなエネルギーを持ち寄ってもらうことで稼働する、
不思議で素敵な植物園なのである。
今回、大谷公園の隅にできあがる不思議な形をした植物園は、
みなさんと、みなさんの心と共に育ち、訪れた人たちを元気にする、
素敵で新しい空間なのである。
栗林 隆
作品・プロジェクトについて
作品名| 植物元気炉
本作は2020年以降、栗林が「アートを通して元気に、健康に」というコンセプトのもと国内外で発表してきた『元気炉』(※3) から派生した作品です。ここ別府では、ガラスと木材で構成された高さ約4メートル、幅約5.5メートルの植物園型の作品として、初めて制作されます。
「私は『植物元気炉』という箱を作るだけ」とアーティスト自身が言うように、このプロジェクトは市民のみなさまから植物をお寄せいただくことから始まります。植物を通して人々が集い交わり、この場所や、まだ見ぬ誰か、あるいは自分自身を大切にする気持ちを持ち寄ることで、ポジティブなエネルギーが満ち『植物元気炉』はいきいきと稼働するのです。訪れた人を元気にしていくという本作の鑑賞体験は、古来よりさまざまな人を迎え入れ、自然の恵みによって心身ともに癒してきた鉄輪の歴史とも重なります。
(※3)…『元気炉』とは、人々の体にポジティブなエネルギーを充満させる、薬草スチームを用いた体験型の作品。原子炉の形を模しており、3・11以降福島でのリサーチを重ねてきた栗林が、2020年11月に富山県の下山芸術の森 発電所美術館にて初号基を発表。現在、常設や移動式、1人用などさまざまな形式の『元気炉』が六号基まで存在する。